学会の活動

日本印度学仏教学会の活動内容

1 学術大会の開催

学術大会は、本学会に所属する会員が日頃の研究成果を発表し、その成果を世に問う場です。 また、インド学、仏教学を研究する研究者たちが一堂に会し、情報交換や親睦を深める場でもあります。 現在は毎年1回の開催で、開催時期や場所は前年の理事会において主催校が決められます。 主催校は加盟校・加盟団体の中から選ばれます。 大会の開催場所は、その選ばれた主催校で開催されるのが通例ですが、これまで関東以北、関東以西のいずれかの加盟校で交互に開催されてきました。


2 学術成果等の公開

これには次のようなものがあります。 学会誌の発行、学会の歴史の刊行、インド学仏教学論文データベース(略称 INBUDS) の公開、 並びに大正新脩大藏經テキストデータベース(略称 SAT) の公開などです。


[学会誌の行]

 学会誌は『印度學佛教學研究』(Journal of Indian and Buddhist Studies)という名称で、年3回刊行されています。 この学会誌には会員の発表成果論文と彙報とが掲載されています。 寄稿論文は査読委員による査読を経た後に編集委員会にかけられ、そこで掲載非掲載が決められます。現在71巻第3号、通巻160冊まで出されています。(2023年4月現在)


[学会の歴史の刊行]

 本学会の歴史の編纂として、これまでに『学会五年の歩み』(1957)、『学会7年の歩み』Special supplementary issue (1951–1958)(1958)、『学会十年の歩み』(1961)、『学会の歩み―十年-十三年の歩み―』(1965)等が刊行されています。


[インド学仏教学論文データベースの公開]

 次に、研究成果の公開としてインド学仏教学論文データベースがあります。 これはインド学仏教学関係の論文を集め、それぞれの論文の中からキーワードを抽出して集積したもので、そのキーワードによる事項検索、著者別の検索ができるようになっています。
 このデータベースの構築は、昭和59年(1984) に当時の平川彰理事長のもと、学会誌『印度學佛教學研究』の創刊号から1984年に至るまでの号について、キーワード抽出して実験的に入力をしたことから始まります。 そして、昭和63年(1988) に学会に「コンピュータ利用委員会」を設置し、今後、インド学・仏教学におけるコンピュータ利用の可能性を検討してゆくとともに、「インド学仏教学論文データベース」(Indian and Buddhist Studies Treatise Database, 略称 INBUDS)の作成を決定しま した。 そして、翌年には学会データベースセンターを開設、本格的にこのデータベース構築事業に乗り出し、全国44の大学や研究機関を協力機関として190余種にのぼる紀要、年報に収録された論文のデータ入力を依頼し、今日に至っています。


[大正新脩大藏經テキストデータベースの公開]

大正新脩大蔵経は、日本が世界に誇り得る漢訳仏典の一大集成です。 図像部15巻を含めて全100巻、各巻平均1,000頁、各頁3段組になる活字本で、高麗大蔵経を底本に、宋、元、明の3本、正倉院聖語蔵本、宮内省図書寮本、各種写本などを対校させたものです。 現在に至るまで、漢訳テキスト文献を使用する際の拠るべき国際的基準テキストとなっています。

<テキストデータベース公開事業>

 大正新脩大蔵経は高楠順次郎や渡邊海旭らによって大正13年(1924)から昭和9年(1934)にかけて編纂されましたが、この大蔵経を平成年代に電子テキスト化して現代のニーズに応え、いわば「平成新脩大蔵経」を編纂しようとの意気込みで開始されたのが大正新脩大蔵経テキストデータベース事業です。
 現代は、漢訳仏典に限らず、従来紙などに書かれていた文献がコンピュータ上で扱い可能なように次々と電子テキスト化されている時代です。 仏典に関してアジア地域を見ても、お隣の韓国ではすでに高麗大蔵経の電子テキストを完成していますし、台湾でも主要な仏教経典はもちろん、大正新脩大蔵経の電子テキスト化事業が進められています。 日本でもコンピュータを研究上の手段として使用している研究者は、早くから個々人でテキストを入力して電子テキストを作成し、自身や少数の研究者仲間の利用に供していました。

<大蔵経テキストデータベース研究会>

 しかしそのような状況の中で、日本のインド学・仏教学の学界でも、組織的かつ統一的に大正新脩大蔵経の電子テキスト化を進めてデータベースを構築することの必要性が認識されるとともに、その事業を創始する気運が高まり、平成6年(1994)には日本印度学仏教学会(当時理事長:前田專學)の承認を受けて、故江島惠教東大教授を代表とする「大蔵経テキストデータベース研究会」が結成されました。 そして大正新脩大蔵経のテキストデータベース作成の事業は、この大蔵経テキストデータベース研究会において推進されることになりました。 このような経緯で、同研究会は日本印度学仏教学会とは予算などは別ですが、学会の支援を得て運営されており、本事業は学会の事業の一端として位置づけられています。
 実際の作業に当たっては、台湾の仏典入力プロジェクト組織の中華電子佛典協會と技術面や入力作業などで全面的な協力関係を結びつつ推進し、 また禅典籍データについては花園大学の国際禅学研究所(IRIZ)が入力したものの提供を受けています。
 本事業の運営資金はこれまで文部省科学研究費補助金などの公的補助、及び学会員の有志をはじめ、この事業に意義を認め賛同してくださる一般の方々に寄付を仰いで運営されてきました。 しかし、この事業には多くの運営資金が必要で、ために平成12年には(財)仏教学術振興会(当時理事長:櫻井秀雄)の肝いりで広く日本の仏教界各宗各派の助力を得て「大蔵経データベース化支援募金会」(事務局長:奈良康明)が発足し、その支援金によって運営されています。

<その成果の公開と利用>

 現在では、大正新脩大蔵経の第一巻から第八十五巻までの全テキストのデータベースが、同研究会のホームページ(http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~sat/)上で公開されており、誰でも利用することができます。 これによって全典籍における用字や語句の検索はもちろんのこと、複数テキストの比較対照なども容易に行なうことができるようになりました。 大正新脩大蔵経を電子化して公開し、全世界のインド学・仏教学・東洋学者の共有財産としたことは、極めて意義深いことと言えましょう。